日記2005春

手力雄神社の火祭り
2005年4月9日(土) 晴 17:45〜21:10(花火御輿宮入〜火祭り終了)
岐阜県岐阜市蔵前 手力雄神社境内



手力雄神社(外から撮影)
満開の桜と空高くはためく幟、境内の御神燈も見えます


 例年、この時期は多忙を極める。連日深夜までの残業は当たり前、休日すら関係ないといった悲惨な状況に陥るのだが、4月に入って陽気も暖かくなり、仕事に追われる日々を送りながらも、気持ちはそわそわ、わくわく。そして気が付けば遅咲きの桜が花を咲かせようとしている。子供の頃、緊張して臨んだ入学式、就職、今では異動を終えて新しい年(年度)が始まる時、いつも桜の花が背景にあった。桜の花が咲く頃、今年もまた1年が始まったんだとしみじみと実感できる。新しい年のスタートを切るこの季節は、大好きな花火芸術との本格的な再会の時として心から待ち望んでいる時でもある。観覧を決定するまでは随分と悩んだが、結果的に今年も例年通り、素晴らしい春の奉納煙火を無事に観覧できたことになによりも感謝したい。


 今年も昨年に続いて、岐阜市の手力雄神社の火祭りを観覧させてもらった。現地へ向かう途中、3月末をもって路面電車が廃止された岐阜の街を訪れて、街の様子を見て回った。岐阜駅前から美濃町線に沿って車を走らせる。軌道がそのままに残る道路を走っていると、今にも電車がやってきそうな錯覚を覚えてしまう。あるのが当たり前と思っていたので、やはり寂しいことだ。
 岐阜市街地から東へ15分ほど走ると手力雄神社に到着する。午を少し回った時間に境内に入って早速場所取り。境内に何本も張られている規制を示すロープを眺めては、昨年の経験を思い出して、夜になるとどのような規制が敷かれるか、取り囲む観衆の動きはどうであったか、その辺を読んで観覧場所を決める。立火棚の直ぐ側が勇壮な火祭りを間近で観覧できる人気のポイントなのだが、立火棚を舞台に繰り広げられる仕掛花火は真横になり、会場全体を見渡すうえでは近すぎてやはり不向きである。結局、昨年とほぼ同じ地点から、会場全体を斜に見渡す一画を確保した。

 場所を確保すると毎度毎度本当に申し訳ないのだが、嫁さんに場所を託して場内の散策に出掛ける。真っ先に駆け付けるのは何と言っても見事な飾り付けがなされた舞台「立火棚」である。各町が競い合うようにして趣向を凝らした飾り付けがなされており、これが約30メートル程の舞台にずらりと描かれている様は壮観である。大勢の人々が代わる代わる訪れては記念撮影をしたり、他の町の舞台と見比べたりと人々を惹きつけてやまない。子供さん達によく受けていたのは流行の「○ツケンサンバ」、物語・歴史上の英傑などを題材にして描かれる舞台だが、その年の流行を反映した飾り付けもあって、これを見るのが毎年の楽しみといった感じだ。
 立火棚には春を告げる桜が描かれているのだが、今年は本物の桜が満開。手力雄神社の入り口付近に立って境内眺めてみると、青空に向かって弾けるように咲き誇る桜と天高くそびえ立つ幟、人々のざわめきと町のあちこちから伝わってくる爆竹の爆音。それらが入り乱れて春祭りの雰囲気を盛り上げている。桜とお祭りが作り出す風景を満喫し、軒を連ねるとりどりの露店をひやかしながら夜を待った。

立 火 棚
8つの町が競い合うようにして見事な舞台を演出します
流行ですね 長良川名物・鵜飼い舟 踊りに命の炎を燃やす出雲の阿国

 火祭りのプログラム(神事)は朝方から始まっており、既に御旅所への奉還神事、長持ちの宮入といった神事は執り行われている。メインである夜の奉納花火のプログラムは、17時40分頃から始まる飾り御輿(以下、花火御輿という)の宮入に始まって、御神燈への点火、滝花火と花火御輿の乱舞、仕掛花火、手花火、山焼花火と仕掛花火といった順番に奉納され、21時10分頃に花火御輿と長持の退出が終わって神事が終了する。

 岐阜県指定重要無形民俗文化財、手力雄神社大祭「火祭」。今年は県のお歴々も観覧に訪れ、東京のテレビ局も取材に駆け付けるなど昼間から昨年とは違った一面を覗かせていた。火祭に先立って、境内を埋め尽くす観衆に再三再四、観覧上の注意事項、火薬を扱う祭である趣旨を充分に説明していた。特に石燈籠によじ登って観覧することは最も危険であると厳重に注意喚起するのだが、それでも夜の神事を通じてマナーを守らない人が沢山いたことは悲しい事実である。

花火御輿宮入の様子(蔵前)

 17時45分頃から始まる花火御輿の宮入。今年はこの時ばかりは参道付近に陣取って間近でこれを観覧しようと試みた。遠くで微かに伝わっていた爆音が音量を増して迫り来る。境内に入ると途端に爆竹が容赦なくばらまかれ、耳をつんざく爆音に包まれる。御神輿は宮入りすると早速仕掛けられていた花火に勢い良く点火され、これを担いで威勢良くワッショイワッショイと練り歩くもの、爆竹が弾けるその上を氏子さん達が練り歩くようなシーンもみられ、ボルテージは一気に増してくるのだ。近くにいた金髪女性の外人さんが「Unbelievable oh no!」と連呼して感嘆していたのが妙に笑える。これからもっともっと凄いシーンが始まるんだよと囁きたくなる。それにしても間近でこれを観るともの凄い爆音を体験できる。何を叫んでもどう騒いでもあの爆音にかき消されていく・・・・、もう耳鳴りがジンジンと来るばかり。全部で9基の花火御輿の宮入を迎えるわけだが、この爆音には参った。私は3基目を観覧した後にギブアップ、妻の元に逃げ帰る有様だった。氏子の皆様は本当にタフであると感心するばかり。 

 宮入を終えると例年通り火祭の神事に先立って一斉に規制が敷かれる。今年は昨年にも増して規制が厳しく、立入禁止を示すロープの内側に少しでも入った者はたちどころに追い立てられ、その警備は徹底されていた。場内は騒然となり、これが収まると火祭の神事が奉納されるのだ。

 20メートルはありそうな高さの御神燈への点火。ロケット花火のようなものが御神燈目指して一直線に突き進み、行灯を支える柱に着火する。炎が導火線を伝って10基の行灯に火が廻っていく様をじっくりと観させてもらった。これを13基奉納するのだが、中にはロケットが上手く進まずに点火できない、または御神燈に仕掛けられたナイアガラの滝から降り注ぐ火の粉が樹木に燃え移ったりと早速ハプニングも起こる。上手く火が着いたら拍手、途中でロケットが燃え尽きて失敗したらあ〜あっと大きな溜め息。13基もこれを眺めるのは退屈そうに思えそうなのだが、実際はそうでもなく、1基ごとに何やら楽しくこれを観させてもらった。

御 神 燈
御神燈(全部で13基)
御神燈には10の行灯が取り
付けられ、下にはナイアガラ
のランスが仕掛られています
夜になると炎が揺らめき
幻想的な雰囲気を醸し
出します

 御神燈の奉納を終えると、いよいよ名物の滝花火と花火御輿の乱舞が始まる。火の粉をかぶって身を清める言わずとしれた神事だ。激しく降り注ぐ火の粉を浴びる裸の男達。担ぐ花火御輿に仕掛けられた花火に自然に点火して、こちらからも激しく火柱を噴き上げる。火を噴く御輿を担いで何度も何度も降り注ぐ火の粉を浴びながら練り歩く様は、勇壮としか形容の出来ない光景だ。
 とにかくこれを一度経験すれば病みつきになってしまいそう。毎年異なる美しく輝く電飾を纏った御神輿は制作に一月半も要するとのこと、無事に炎を浴び終えた際は、惜しみない拍手と声援を送ろう。
 勇壮な炎の儀式、滝花火を受けて会場の興奮は最高潮に達する。空高くシュゴーっと火の粉を噴き出す滝花火、こちらもロケット花火で点火するのだが、各町毎にナイアガラの滝などを舞台から滝花火を支える柱に飾り付け、滝花火が点火するまでを様々な仕掛花火を交えながら楽しめる工夫がなされている。また舞台では、枠仕掛けや乱玉が賑やかに舞い上がってこちらも雰囲気を大いに盛り上げてくれる。
 ビデオライトを灯したテレビクルーが忙しなく走り回っている。あの人達は間近でこれを経験できて幸せだなぁ。
 滝花火は火薬を詰め込んだ孟宗竹を5本束ねて空高く寝かせて使用するもので、点火と同時にもの凄い勢いで火の粉を噴き出す。時折、爆発的に激しく炎を噴き出すシーンが見られ、立火棚の舞台にまで飛び込んで仕掛花火に着火したり、一部は舞台を飛び越えるシーンもあってハラハラした。何が起こるか判らない、ここの花火は本当に大変である。
 締めくくりは、舞台に氏子さんが勢揃いして手花火が始まる。片手で持てる手花火を手に舞台から一斉に繰り返し何度も何度も花火を奉納するのだ。その下では鉦を担ぐ若者たちが、手筒の火の粉を浴び続けながら狂喜乱舞する。いつもながらこの光景には言葉を失う。

滝 花 火
空中に浮かぶ滝花火 花火を仕掛けた金鯱 舞台から伸びる
ナイアガラ
夜になると各町の仕掛花火
が賑やかに披露されます
滝花火から降り注ぐ火の粉 火の粉を浴びながら御輿を担ぐ
(蔵前)
本当に勇壮な炎の禊ぎです
(東中島)

 手花火が終わると規制がゆるまって、東側の参道付近の観衆を一気に内側のロープ内にまで迎え入れた。クライマックスの仕掛花火は、取り囲むようにして観覧していた鈴なりの観衆に落ち着いて観覧してもらおうとの粋な計らいかもしれないが、私的には撮影場所の前に突然観衆が雪崩れ込んできて、大慌てで場所を移して山焼け花火をカメラに収めるポイントを確保し直した。(画面上部に木の枝が入ってしまうのだが(^^; )このような動きは昨年にはなかったことだ。
 クライマックスの山焼花火は立火棚を舞台に、手筒花火と箱物仕掛花火を仕掛け、舞台の下には地雷と説明されていた雷を大量に仕掛けて、これらを同時に点火するもの。山焼の開始に先立って、舞台に飾られた人形には火が移らないように仕掛けてあるとのアナウンスが入り、観衆を安堵させる。一部の人形には覆いが被され火が燃え移らないようにされていた。
 やがて舞台からオレンジ色の火柱が一斉に空高く噴き上げ、あちこちから仕掛花火が舞い上がる。舞台の下では雷の爆音がドカーンと豪快に場内を突き抜けてゆく。小型花火ではあるが、打上ものの迫力は、やはり人々を魅了してやまない。山焼を終えると大きな拍手で火祭は終了した。
 火祭が終わると舞台は再び静かにライトアップされ、夜空に鮮やかに浮かび上がる。火薬の匂いが残る舞台は、勇壮な火祭の余韻を存分に感じさせており、火祭と鮮やかな舞台との見事なコントラストをかみしめながら、境内を後にした。

 今年の春も素晴らしい奉納煙火を経験できて大満足。
 会場内で準備に忙しい中、貴重なお話を伺ったり、またお便りを頂きました皆様、本当にありがとうございました。

手 花 火 山 焼 花 火
舞台から一斉に手花火を奉納
その下では若者が炎を浴び続ける


とにかく信じられない
この光景は何度見ても圧巻です
点火直後のシーン
火柱と仕掛花火
やがて花火と舞台下の雷が
豪快に競演します

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