第22回 全国新作花火競技大会
2004年9月4日(土) 雨 19:00〜20:50
長野県諏訪市 湖畔公園諏訪湖上


 今年も例年と同様に前夜から出発、殆ど下道の長い道中を走破して1年ぶりに訪れた諏訪湖の新作花火大会、もうすっかり夏の終わりを告げる大会として定着した感がある。新作との出逢いはちょうど4年前の2000年に遡る。それまで関西・東海三県から外に遠征したことのない私にとって、諏訪湖新作は今までに経験したことのないタイプの大会、花火の持つ無限の表現力・魅力に接した記念すべき大会となった。そして終幕のKiss of Fireのあまりの美しさに感動する。初めて出逢った瞬間からすっかり惚れ込み、以来、毎年のように遠路はるばる出向いて観覧を重ねた。過去3回の観覧は何れも絶好のコンディションの中で素晴らしい花火を堪能することができた。今年ももちろんそうであって欲しい。


午前8時頃の諏訪湖(背後は霧ヶ峰)。この時間
では雲が多いもののまだ青空が拡がっていた

 目覚めると朝日を受けてキラキラと輝く諏訪湖を目にして心が弾む。背後にそびえる霧ヶ峰の山々も、すっきりと見渡すことができた。この時点で今夜の惨状を予測することなどとてもできなかった。なんとか持ってくれるものと祈って長い一日が始まる。

 諏訪湖まで訪れて花火だけを観て帰ることなどしない。毎年お約束のように付近の温泉、観光地巡りを楽しむのだが、今年は晴れ間が覗いたのも束の間、直ぐに雲が拡がり予報通りに思わしくない空模様となっていった。これを受けてビーナスラインなどのドライブも取り止め、温泉巡りも事情があって中止。結局、諏訪大社参拝だけに止まった。職場などへのお土産を買い込んだ後に、諏訪市役所の臨時駐車場に車を入れて、車中で空しく夜の訪れを待つ(実は爆睡だったりして)。

 昼過ぎから雨が降り始めるのだが、それはパラパラと雨粒が落ちる程度ですぐに上がった。微かに伝わる雷鳴もまだ遠く離れた地点での出来事と気にしないように努める、悲劇は想像したくなかった。

諏訪大社下社秋宮

 15時頃になってから、ようやく会場へ向かう支度を始めた。諏訪市役所に隣接する小学校の校庭に設けられた臨時駐車場は、この時点でやっと満車になったという入り具合で、荒天の予報によるものか、お客さんの出足がかなり鈍く、これが土曜開催になったにも係わらず観客数がそれほど伸びないことを暗示していた。
 約1キロほどを歩いて湖畔公園のメイン会場に到着する。先着の愛好家の皆さんと連絡を取って落ち合い、暫く花火談義に耽る。シーズンの終了時期ともなるとそれぞれ観覧した花火の感想などを持ち寄って賑やかに話し込んだ、談笑の中で東国の有名花火大会の話題に触れると、羨ましさと自分の遠征能力の限界を感じてしまう。今夜の競技花火が無事に観覧できることを口々に願い合って、それぞれの観覧場所へと散っていく。

 間欠泉側一般観覧エリアの波打ち際の観覧場所へと向かう。この大会は通算4回目の観覧になるが今回はメイン会場から最も離れた地点での観覧となる。思えば2000年の1回目の観覧は、まだ無料エリアだった石彫公園でのんびりと花火を観覧できた。2回目から石彫公園が有料エリアになり、間欠泉側のホテルマリーナの間から花火を観覧する。そして土曜開催となった今年はこのエリアが団体客用に没し、さらに離れた地点へと追いやられた。
 湖畔沿いの砂利場に入り、観覧場所を目前にして、やれやれという段になって雨が降り始める。手にしていた傘で凌げると踏んだのだが、瞬く間に本降りとなった。それは傘も効かない土砂降りの雨、あちこちで悲鳴が飛び交い、場内は騒然となる。この時、私はカートの中に大切なカメラと共にレインコートをしっかりとパッキングしてしまい込んでいたため、咄嗟に取り出すことができず、無防備に強い雨に打たれ続けた。僅かな軒下はお客さんがひしめき、逃げ場はどこにも無い、傘の中で背中を丸めてひたすら耐える。30分ほどしてようやく小止みになり、レインコートを取り出すのだが、既にズボンはビショビショに濡れて悲惨。雨は夕立で終わることなくこのまま降り続くのであった。

 こんな天気では、お客さんの出足が想像以上に鈍い。一見、隙間無く場所取りされているかのように見えるのだが、大半は無人のシート。地元組の出足はかなり遅く、開幕間際になってようやく埋まっていった。
 それでも雨にもめげず、頑張って待ち通すグループをたくさん見かける。シートをテントのように張ってその中で雨を凌ぐグループもいれば、ゴミ袋のようなものを上手く切って合羽変わりに利用する人、全身ビショビショになっているお子さんも何人か見かけた。すっかり秋というより寒いくらいの気象条件、風邪を引かないように。

降りしきる雨、頑張って耐える人々。シートをテント代わりにして傘でサイドを守る。それくらいの強い雨でした。 18時過ぎの間欠泉側の様子。この時間帯に入っても無人のシートが目に付く閑散さ。

 風はゆるやかに左側へ流れ、間欠泉側で観る分にしては良い具合だった。それでも湿度が高く、対岸の灯りが霞みいやな予感がした。呼び込みの段雷すら上がることなく、初島上空の状態を掴めないまま本番を迎えた。

優勝(経済産業大臣賞) No15 夢花火
小口芳正 氏作(小口煙火) 

 開幕間際になって小止みになり、今夜は無理かと諦めかけていたカメラを慌てて取り出して三脚に据える。傘を差しての撮影、後ろの観衆に迷惑がかからないように低く座る高さにセットする。振り返ると大半の観衆が傘を手にしたまま花火観覧に臨む様子でホッとした。辺りは隙間だらけ、傘を高く差す人、パイプ椅子を使って観覧する人とみんなそれぞれの姿勢で開幕を迎えようとしているのだから、少々のことでは文句を言われそうな気配はしない。
 冒頭に入る諏訪市長の挨拶、全国の花火大会でも数少ないという経済産業大臣賞の栄誉を授与できると誇らしげに力強く語ってくれた。ところが続いて始まった開幕スターマインは煙まみれで、気分が滅入る。早くもいやな予感が的中した。

 前半は初島上空を停滞気味に覆う煙も何とか流れてそれなりに観覧できた。雨は小降りになった思えば強く降ったりとけっして止むことはなく、傘の中でじっと耐えながらの窮屈な撮影&観覧が続くのだが、それでもまだ見えるうちは、せっかくの新作物を頑張って撮ろうとそれなりの緊張感と集中力を維持しながら花火大会に臨めた。しかしながら中盤の武舎煙火さんの作品からは殆ど見えない状態にまで状況は悪化した。厚い煙の中でピカッと光る花火、小割の一部、枝垂れる冠の引先が見えるのみ、もう駄目だ・・・・・・。競技の採点などできるものか。
 新作花火大会を楽しむ方法は
 ○シーズン終盤の競技花火とあって、観覧を充分に積み重ねてある程度目が肥えた状態で新作花火を自分なりの感覚で鑑賞できる。
 ○写真も十二分に経験を積んでいるので、1発毎に又は何発か写し込むなど自分なりの撮影方で撮る楽しみ。
 ○プログラムを手元に置いて嫁さんと作品の評価を交えながら競技に参加する。
といったところ。ところが今年はどうにもならなかった。初島上空をいつまでも覆い続ける煙の塊が観る楽しみを奪い、降りしきる雨が撮る楽しみまで奪い取った。そして採点しようにもペンを握る手には傘がしっかりと握られ、プログラムを外に出そうものならたちまちにして雨と湿気にやられて冊子自体が駄目になってしまう。雨の中の花火大会は今年何回かあったが、淀川も熊野も花火はちゃんと観ることができた。ところが諏訪湖は、打上上空の肝心の開花部分を覆い続ける質の悪い煙、それに加わる異常な発煙と無風状態。全てが今シーズン最悪だった。アナウンスと流される音楽だけが例年以上に賑やか。本部付近のクレーンに吊されたスピーカから途切れ途切れに伝わっていたアナウンスが、今年は間欠センター付近、他にもあちこちに設けたスピーカから流されているようで、十二分に聞き取ることがでた。しかしながら輻輳してかえって聞こえにくい感じもした。

競技花火(写り具合に関係なくちゃんと見えた作品で、私の個人的なお気に入りのみUPしています。)
No4 忘れな草
田村幸夫 氏作

芯部が凝っている作品、八重芯っぽく見えました。写真は10号(^^)
No12 花火万華鏡
小幡知明 氏作

絶妙の色使い。見事に万華鏡を演出しています(^^)
No16 冬のソナタ
今野義和 氏作

お気に入り。雪を現した純白の小花が銀の花にブレンドされています(^^)
No23 コスモサンクチュアリ
本田裕之 氏作
小宇宙を描いた千輪菊。イメージソングの「機動戦士ガンダム音楽集・宇宙よ」が私の少年心を擽りました(^^)

 それでも時間通りに進み、競技の審査結果を発表する。嫁さんと見えた作品の中で良かったと思う物を1つ選び合って予測する。これが不思議なことにまた負けた。優勝作は男と女の複雑な恋模様が湖面にまで枝垂れる冠の引きに現れていたのだという。この作品は開達高度が他の玉よりも不思議と低く、そのおかげで煙に邪魔されることなくしっかりと鑑賞できた。写真も低く開花したのが幸いして湖面にまで枝垂れる様を写し込むことが出来る貴重な作品だった。(ちなみに私の選んだ作品は選外になってたりして・・・・。)
 いつもより少ない寂しい入賞作品の発表を終えて、終幕に向かう。

左手、初島奧から 
 右手、間欠泉側から

 競技大会のフィナーレは、諏訪湖名物のあまりも有名な「Kiss of Fire」。無惨なコンディションの中、殆どの観衆が席を立つこともなく、じっと耐えて待っていたのは、この水上スターマインの存在があることに他ならない。

 入賞の発表も例年になくスピーディになされ、待たされることなく水上スターマインに移る。2艘の舟が、仕掛の両脇で赤いトーチを振りかざすシーンをじっと見つめる。ジャズ風の音楽が流され、驚いたことに場内のあちこちから手拍子が自然と沸き上がった。荘厳な雰囲気に包まれて始まる「Kiss of Fire」だが、今年は悲惨な花火の締めとして、最後くらい賑やかに華やかに行こうという観衆の期待が手拍子に現れているかのようだった。やがて、点火される。炎が水上を流れ、それを追いかけるようにして花火が咲く、手拍子は大きな歓声へと変わっていった。
 水上で完璧に半円形に咲く花火、玉がどんどん大きくなって双方の花火が近づいていく。あぁ〜なんていう美しさ。水面から直に伝わる爆音の爽快感に全身が包み込まれていく。波打ち際で観るKiss of Fireの迫力と同じ目線で観る絶景は一味違うものがある。
 芯入りの割物が惜しみなく咲き誇る。その様は湖面に映えて言い尽くせない美しさがある。この絶景に佇めば、先程までの悲惨な出来事などまるで遠い昔の事のように思えてしまう。雨に打たれ見えない花火に堪え忍び続けた私たちに、最後の最後になって神様が微笑んでくれたのか、今夜の舞台を台無しにした煙に水面を遮られることもなく、この時ばかりは雨も止んで、水上で花咲くスターマインの美しさを純粋に堪能できた。あちこちで大きな歓声が上がり、そして全てが解き放たれていった。
 やがて始まった初島からの裏打ちは、たちまちにして煙に遮られ、昨年魅せた八重芯や千輪菊が混じっていたのか、その真価は分からない。それでも終了のアナウンスと同時に満場の拍手に包まれた。毎年、訪れる人々の心に尽きることのない感動をもたらせてくれる「Kiss of Fire」。今年の新作競技花火大会は、なんだかこれを観に訪れただけのような気にさえなってしまう。

二つの炎が近づいていく そして一つになる 「Kiss of Fire」

 沖の花火師さんとのエールを交換し、お約束の花火の打上を楽しんで、これで本当に大会は終わった。音楽堂付近では例年通り表彰式が行われるようで、訪れてみたかったのだが、今年は諦めた。もう力尽きたのだ。合羽を脱ぎ、濡れた機材を残った1枚のタオルで拭き取り、シートをなど一式をしまい込んで、ようやく会場を後にした。

 帰りは諏訪湖を南回りに脱出、なんら渋滞に遭うことなく岡谷市を抜けて塩尻峠を越すことができた。こんなことは初めてである。
 木曽福島付近にて車中泊。「Kiss of Fireを楽しめて良かったね」。そう言い合って心が慰められる今年の新作花火競技大会だった。


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